IDAクリニック産婦人科

 
2017年12月8日
子宮頸がんについて(つづき)

前回、子宮頸がん検診を是非してくださいねって書きました。

長期的な観点で言うと、すべての人に子宮頸がんのワクチンが接種されることを希望しています。
これにより子宮頸がんの発病を90%減らせるからです。
ワクチン接種後の副反応として慢性疼痛や神経障害などの症状が一時期報道されましたが、HPVワクチンによる直接的な因果関係はないということが、全国疫学調査結果より明らかになっています。

 

子宮頸がんワクチン/厚生労働省研究班(研究代表者 祖父江友孝大阪大学教授)の全国疫学調査結果報告を受けてのコメントについて

 

12歳前後という多感な時期に投与することを考えると、我々産婦人科医は投与される方に十分な説明が必要と考えます。
この説明がなかったために大きなストレスがかかり、上記のような精神反応が出る方が増えたのではないでしょうか。
その点で反省するべき事が多く、教育の現場でのワクチンに関する講義・説明が今後重要になってくるのではないかと思います。

 

我々産婦人科医が子宮頸がんワクチンをこれほどお勧めする理由というのは、子宮頸がんで亡くなる方を実際に多数診ているからなのです。ワクチンの副作用を声高に発信するメディアは、子宮頸がんで治療された方、亡くなられた方の現実を報道しません。

 

子宮頸がんは30代~40代という、子育て世代に多いがんです。幼い我が子を残して逝けないと一生懸命治療されますが、前述の通り子宮頸がんが運良く根治できたとしても術後の下肢リンパ浮腫などの症状に悩まされたり、数十年経ってから放射線療法の後遺症である直腸・膀胱腟瘻(膀胱や直腸が腟と交通し、便や尿が腟から持続的に流出する状態)になり、それによる感染や疼痛で亡くなる方もいらっしゃいます。

 

治療が奏功しなかった場合は、やはり下腹部の腫瘤増大や下半身の著明な浮腫による非常に強い苦痛を伴うことが多く、もちろん医療用麻薬をどんどん増量していくのですが、我々の印象としては「壮絶な最期」を遂げられる方が多いのです。

 

私が実際に診ていたひとりの患者様のお話をします。
その方は40代前半で性器出血を主訴に受診されました。すでに肺にまで転移している末期の子宮頸がんでした。腫瘍が大きすぎたため手術や放射線療法は適応にならず、化学療法を施行しました。
元来独り身で明るい性格のこの方は、前向きに笑顔を絶やさずに2年間治療を頑張られましたが、ある程度腫瘍が縮小したものの、一進一退の攻防でした。
最後2ヶ月ほど姿が見えなかったと思ったら、非常に強い下半身の浮腫と疼痛で再診されました。
生き別れになっていた実母様を見つけ、1ヶ月近く楽しい時間を過ごされたそうです。病状の事は告げないまま。

 

終末期の激しい苦痛を麻薬の調整でやっと取り除けたところで亡くなりました。
実母様はこの急激な娘の変化に気持ちついて行けず、精神的に非常に苦しまれました。

 

この患者様が治療中に私にくださったお守りです。いつも胸につけて、私の戒めとしています。

 

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この方と同じ思いをする方が少しでも少なくなることを祈って。

 

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子宮頸がん予防啓発プロジェクトのポスターを院内に掲示しております。パンフレットを同じ場所に置いてあるのでご自由にお取りいただき、見ていただけたら幸いです。

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