IDAクリニック産婦人科

 
2019年1月10日
出生前診断について

「出生前診断」という言葉を聞いて、どういうイメージを持たれるでしょうか?

「ダウン症かどうか知る検査?」とか「赤ちゃんが大丈夫かどうか見る検査?」とかざっくりしたイメージをお持ちかもしれません。そんな言葉聞いたことないという方もいるかもしれません。

 

「出生前診断」というのは、大きな意味で言えば「生まれてくる前の赤ちゃんの状態について、生まれる前に診断すること」です。

・赤ちゃんの心臓が動いているかどうか

・男の子か女の子か

・赤ちゃんの大きさは正常範囲内かどうか

なんていう、妊婦健診で普通に患者と医師の間でおしゃべりしながら見ている事柄から

・脳や心臓の構造に異常がないか

・腸管や腎臓、その他臓器、骨格などに異常がないか

という、やや専門性をもって時間をかけて細かく超音波で診断しなければいけない事柄

分娩中に胎児心拍モニターを装着したり超音波で見たりして、赤ちゃんが苦しくなっていないかどうかを診断するのも出生前診断の一つと言えるでしょう。

 

そして、生まれてくる赤ちゃんに重篤な疾患を発症しやすい体質がないかどうかについて、完全とは言わないまでもある程度の情報を得ることができる検査がいくつかあります。

これが、狭義の出生前診断。「出生前遺伝学的検査」ともいいます。赤ちゃんの遺伝子に関わることについて調べる方法です。

 

重篤な疾患の遺伝子をお持ちの両親が、子供にその遺伝子が伝わっていないかどうかを調べたいということもあります。

しかしこれは特殊例で、多くの場合重篤な疾患を持ちやすい体質(染色体(*)異常)がないかどうかを網羅的に、もしくはいくつかの染色体に限定して調べるという検査が一般的です。

 

(*)染色体:すべての生物は体の設計図(遺伝子)を持っています。たくさんの遺伝子はDNAというとてつもなく長い紙に書き込まれており、この紙をまとめて本にしたものが染色体です。生物ごとに冊数は違いますが、人間の場合22種類の本を2冊ずつと、男女の違いについて書かれた本を2冊、合計46冊持っています。この本1冊が染色体1本というわけです。人間は普通ほぼすべての細胞の中に46本の染色体をもっています。

 

染色体について調べて、もし重篤な疾患を持ちやすい体質の赤ちゃんが生まれてくる可能性が高そうなら、それについての準備をしたり、体力的なことや経済的なことで産後に母体の健康的な生活が阻害されそうなことが心配で、妊娠そのものをあきらめる方もいます。

出生前遺伝学的検査がなかった時は赤ちゃんが生まれてきてからアタフタとしていたことを、妊娠中に考えることができるようになったという利点はあるでしょう。

 

しかし、赤ちゃんの側からしたら歓迎されることではないのかもしれません。

遺伝子は、人それぞれが持つ個人情報の中で特に重要なものです。その情報を本人の許しもなく勝手に覗かれて、生まれてもいいかどうか判断される場合もある。赤ちゃんからしたらたまったものではないかもしれません。

 

赤ちゃんだけの問題ではありません。遺伝子というものは両親から引き継がれるものです。赤ちゃんの異常が、突然変異ではなく両親由来のものと判断されれば、知りたくもなかった両親やその家族の異常までわかってしまうかもしれません。

 

昨今、母体の血液から出生前遺伝学的検査ができるようになっております。

しかしながら、赤ちゃんへの侵襲がないからといって、ホイホイ気軽に行っていいものではないことは、ここまで読んでいただいた方にはご理解いただけるのではないかと思います。

 

するなというのではなく、正しい知識を持った上で、やるのかやらないのか、判断してほしいということです。

 

当院では開院当初から出生前診断を行っており、検査前の患者様へのご説明から、結果が出た後の説明やカウンセリング、必要であれば提携医療機関へのご紹介も丁寧に行っております。

また、当院かかりつけの妊婦様に、出生前診断に関するリーフレットをお渡ししております。

 

出生前診断実施時の遺伝カウンセリング体制の構築に関する研究

 

出生前診断に関してお悩みの方、ご興味のある方はお気軽に当院にお問い合わせください。

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