IDAクリニック産婦人科

 
2018年2月15日
陰部掻痒、帯下異常

当院の看護師さんよりこの話題について書いてくれと言われたので、今回は帯下(おりもの)の異常についてです。

 

陰部の痒みや帯下が多い、においが気になるなどで来院していただく患者様が多くいらっしゃいます。

腟・外陰炎の原因は大きく以下の4つに分けられます。

①腟カンジダ症

②腟トリコモナス症

③細菌性腟症

④萎縮性(老人性)腟炎

 

もともと女性の腟内は、「デーデルライン桿菌」と呼ばれる乳酸菌を主とする常在菌叢(きんそう)によって、酸性に保たれています。腟壁の細胞にはグリコーゲンが蓄積されており、上記の細菌群が剥がれ落ちた細胞のグリコーゲンを分解して乳酸を分泌するので酸性になるのです。これにより、他の微生物が侵入したり増殖したりするのを防いでいます。

 

風邪で抗生剤を飲んでデーデルライン桿菌が少なくなったり、体調を崩した時、妊娠した時、糖尿病になった時などに免疫力が下がったりすると、腟の微生物のバランスが崩れていろいろな感染症にかかりやすくなります。

①腟カンジダ症

もともと腟の中にはたくさん微生物がいますが、そのなかにカンジダ(カビの一種)もいます。デーデルライン桿菌が少なくなったりして酸性が弱くなってくるとカンジダが元気に増殖してきます。症状は粕状、ヨーグルト状、チーズ状の帯下、外陰部や腟内の痒みです。市販薬もたくさん売っているようで、まず使用してから受診される方もいらっしゃいます。性行為で感染することもあるようですが、もともと常在菌の一つであることを考えると性感染症とは呼べないと思われます。治療は腟洗浄、腟錠の挿入、外陰部軟膏塗布を行います。

②腟トリコモナス症

同様にトリコモナスという原虫(単細胞でグルグル動く微生物)が増殖して発症します。黄白色泡沫状の帯下、外陰部・腟の掻痒感や灼熱感などの症状があります。顕微鏡で上記の微生物が見えれば確定ですが、細菌培養の検査でも検出できます。性感染することもありますが、それ以外の感染経路もあるようで、男性経験のない方もまれに感染するようです。治療は腟洗浄、腟錠の挿入もしくは抗菌剤内服です。

③細菌性腟症

デーデルライン桿菌が減って、他のバイ菌が増えた状態です。腸内細菌や皮膚常在菌が増殖することがほとんどですのでこれも性感染症ではありません。灰色~淡黄色の帯下、腐った魚のような臭いがあります。炎症が強くないため痒くなることはあまりないようです。治療は消毒と腟錠などの挿入です。

④萎縮性(老人性)腟炎

閉経後に女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少します。腟壁の細胞は女性ホルモンの影響を受けているため、ホルモンの減少により萎縮していきます。これによって炎症がおこり掻痒感や痛み、軽い出血を来します。上記①~③と違って、微生物による炎症ではありません。治療はホルモン製剤の腟錠を挿入したり、経口でホルモン補充を行います。

 

ただし、帯下の異常や出血の裏にはもっと深刻な病気(子宮がんなど)が隠れていることもありますので、あまり長く続くようなら様子を見ないで必ず受診するようにしてくださいね。閉経後の出血も要注意ですよ。

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